富士フイルムの色がいいとか冗談だろ?

世の中はおかしな言説が罷り通るものだと私は本当に感心します。デジタルカメラが生成する画像ファイルは見たままの光景が完璧に再現されてさえいればいい訳で、レンズ、カメラ本体、イメージセンサー、画像エンジンといった一連のシステムを通して、何かが加算されたり、何かが減算されなければそれに越したことはありません。

にも関わらず。どこの色はいいだの悪いだのと騒ぎたてる低脳どもが後を絶たないのは一体どういう理由に依るものなのでしょうか。ましてメーカー側が勝手に「俺の考える絵はこうだから」と自分の主張を押し通されても困る訳で、寝言は寝て言えとしか言いようがないです。

冒頭に記載した「富士フイルム」とは、具体的にはGFX50S IIの事です。購入当初私はパラメータ設定をどうすればいいのかについて相当悩みました。

最初に躓いたのは快晴の空が燻んだ謎の色で再現されてしまうことでした。試行錯誤の末に達した結論は「Dレンジ優先」の設定を切るというものなのですが、富士はハイライトの飛びを嫌う露出の与え方をします。加えてDレンジ優先を自動(AUTO)に設定するとハイライト側の階調を無理矢理残します。
それらが相まって意図しない色の燻みを発生させてしまうんだろうなと思いますが、一方で曇りの日などは「Dレンジ優先」を自動に設定しておく方が良い結果に繋がる(ハイライト部の階調がきちんと残る)こともあります。カメラ側の設定をどうするのかは、本当に悩ましいです。

このため「どこのメーカーであろうとも、デジタルカメラはRAWで撮影して後付で現像するしかない」という結論になるのですが、富士くらい現像に手の掛かるメーカーは他にありません。機材を買うのは簡単ですが、実際に使ってみて本当にびっくりしました。「やっちまったかこれはー!」って感じでしたからね。

毎回毎回、親の仇のようにニコンを引き合いに出して本当に申し訳ないのですが、ニコンは撮って出しの画像再現性が極めて低く、それ故に「現像」と呼ばれる後処理が必ず必要です。それでも一定のサルベージは期待できましたから「現像の自由度はかなり高い」とすることが出来ます。一方、富士はこの後処理の自由度が極めて低く、恐ろしく手間が掛かるのです。

富士は公式ページで無償の現像ソフトが三種類あることをアナウンスしていますが、私は全部試しました。後々のために所感をここに記載しておきたいと思います。

1.Capture One Express Fujifilm
私が入手したいのは富士専用の無償版なのに、いくら頑張っても試用期間つきの製品版がダウンロードされてしまいます。
お前は詐欺師かダボっ!
論外にも程がある。インストールを強要されたソフトは数分間使っただけでアンインストールしました。この為「お前は詐欺師か」という以外の所感は何もありません。

2.RAW FILE CONVERTER EX powered by SILKYPIX
結論を先に言ってしまうとシルキーの機能制限版です。私はシルキーの製品版を使っていましたから違和感なく使えました。でも人には勧めません。

◾️長所
RAW現像の際に生成されるサイドカーファイルは製品版で処理しても正しく反映されます。上位互換が確保されていて現像をやり直すことがないように配慮されているのは良いですね。また「ファインカラーコントローラ」の考え方は独特で面白いです。

◾️短所
最初にはっきり言ってしまいますが「メーカー純正ソフト」としての機能はありません。あくまでも市川ラボラトリーが富士に提供する「無償汎用ソフト」です。以下に、これは自分には合わないなと思った理由を列記します。

①ダイナミックレンジ、Dレンジ優先といったカメラで設定するパラメータを変更する機能がない。
→「メーカー純正ソフト」ではないので仕方ないとも言えますが、これは本当に痛い。あ、出来ないのかと気づいた時の落胆たるやもうw
いえ、期待した自分が馬鹿でした。

②RAWは操作出来るがJPEG はできない。
市川ラボラトリーの製品版ソフトに誘導するための撒き餌と考えてください。

トーンカーブを無駄に弄る絵作り。
デフォルトのガンマが1.15とか本当に勘弁して欲しいです。シルキーは画像ファイルのサルベージには向いていないと思います。

④トリミングの範囲指定方法が独特すぎる。
無料ソフトなので試してみれば分かります。変です。とにかく変です。何なのこれってレベルです…

⑤露出補正の考え方が変。
プラス側に露出を補正する場合、ハイライトの調子を残してシャドー部と中間域を持ち上げてしまいます。この為、いくらパラメータを弄っても思いどおりの絵になりません。

シルキーはいろんな意味で慣れが必要で、今では気が向いた時以外使っていません。

3.FUJIFILM X RAW STUDIO
結論から言うと、どれだけ面倒でもこれを使うしかないです。
◾️長所
カメラで設定可能なパラメータを後付で弄れるソフトはこれしかない。長所はそれだけです!

◾️短所
①カメラをパソコンにUSB接続しないと使えない。しかも処理が無駄に遅い。
中のひと、あなたバカなんですか。
こんなの富士だけでしょうね。「所詮富士ごとき、写真界のマイナープレーヤーか」という所感しかありませんが、それでも使うしかないのが辛いところです。

②ビューワーとエディターが一体化されている。この為任意のファイルを現像しようとする場合、同一フォルダにある画像ファイルのサムネイルを延々と読み続ける。ところがこれが滅茶苦茶遅い上に全部読み切らないと何も始まらない。
→ひとつのフォルダに格納するファイル数を予め絞ってから現像に着手するか、新しいフォルダを切ってファイルを格納しなおしてから現像するしかないですね。

③カメラで設定できるパラメータを変更すること以外、本当に何も出来ない。出来るのはRAWファイルのパラメータを変更してTIFFJPEGの画像ファイルを切り出す事だけ。
→トリミングはおろかファイルをリサイズする事さえ出来ません。ゴミ取り?何それ。加えて本当に判らないのは元のRAWファイルには撮影時に設定したパラメータ情報が書き込まれているのに、このソフトを使っても変更したパラメータを元のファイルに上書き出来ません。サイドカーファイルが生成されるだけです。ニコンソニーもメーカー純正ソフトでは上書き出来るのに富士だけ出来ないのは何故?バカなの?富士フイルムは昔から指定校制で天下の秀才しか就職できない筈ですが、それがまたどうしてここまで頭が悪いんですかね。

④他のアプリに画像ファイルを直接渡せない。
上記のとおり、レタッチは他のアプリでやるしかありません。富士もその事は分かっている筈ですが、画像ファイルを他のアプリに直接渡す機能はありません。
→現像の結果を一旦16bit TIFFで吐き出して、そのファイルを他のソフトで弄るしかありません。つまりRAWファイルと共に、レタッチ用に切り出したTIFFファイルも適切に管理する必要があります。
まあ面倒くさいの何の、これが許せるか許せないかで評価は大きく変わると思います。

⑤サルベージモードが存在しない。
フィルムシミュレーションなんて有り難くも何ともないです。私にしてみれば本当にアホかという所感しかないです。
任意の色の再現性がおかしいと思ったら意地と根性で色温度やら色被りやらを修正する必要があることに変わりはありません。フィルムシミュレーションのモードをいくら変えても無駄です。深みに嵌るだけで一切改善はしません。

富士のフィルムシミュレーションを彩度の高い順に並べられるひとはいますかね。
ベルビアはビビッドか風景でしょうね。プロビアは標準=スタンダードかな。
アスティアはソフトってなってますけどポートレートという事でいいですか?じゃあプロビアとアスティアでは一体どちらの彩度が高いんですかね。

後は何なんでしょうね。ニュートラルに該当するモードはありますか?フラットは?

どこにもありません、そんなもの。

富士は訳の分からない、しかも使いもしないモードを粗製濫造して本質的な部分を誤魔化していますが、そんなものを有り難がる理由はどこにもありません。まともな色再現性を確保してから出直してこいとしか言えません。

つまり富士は「失敗画像を後処理でサルベージすることを一切考慮していない」というのがこの項の結論です。結局、富士は令和になってもアナログライクなフィルム屋のままでした。

GFXは決して安い買い物ではなかっただけに、私は本当にがっくりきました。
クソですよ、クソ。いやもう本当にこんな糞ソフト初めて見ました。ソニーのEDITが神がかって見えるレベルですからね。
富士は現像のプロセスを故意にややこしいものにしていますが、私にはアホかいなという所感しかなく、富士に対してこれ以上の投資をするのを止めました。

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

世の中は何事に於いても好事家、信者と呼ばれる人達で溢れ返っています。無けなしの金をはたいて買った機材を偏愛されるのはどうぞご自由にとしか言いようがありません。ですが、そんな人達に限って自分の使っている機材を全力で擁護するだけでは飽き足らず、他人の使っている機材を貶めなければ気が済まないのは何故なのでしょうか。本当に手に負えません。
あの人士は一体何が楽しくて写真を撮っているのでしょうね。いっそのこと一生、カラーチャートでも撮影していればいいと思いますが。

私が富士GFXを使って最初に驚いたことは、ピント面の解像です。これに関しては本当に凄まじいの一言です。最前面にピントを置いて背景の大部分を崩すのは勿体ないので、あれ程嫌いだった前ボケを容認するようになりました。本件に関してはいいものはいいと認めますし異論を挟む余地はありません。

ところが富士GFXの露出精度はかなり怪しく、随伴する色再現性がほんとうに安定しないのです。富士の関係者もまして信者も一切言及しませんがね。

現地で納得がいくまでパラメータの変更を掛けて一枚の絵を作り込む時間があれば別ですが、露出、ダイナミックレンジ、フィルムシミュレーション、色温度等を都度変更するのは率直に言って凄い手間が掛かります。
だからこそ「現像」というプロセスを介在させて撮影時の省力化を図りたい訳です。ところがタチの悪いことに富士はこのプロセスを故意に面倒なものにしています。

私はこの一点だけで富士を人には勧めません。富士の色がいいとかアホかいな。色再現にそんなに自信があると言うのなら自力で「純正ソフト」くらい作って配布しやがれ大馬鹿野郎め。

色がいいといった類の無責任な言説は都市伝説か、ただの嘘でしかないです。良い子のみんな。騙されないようにしましょうね。

以上、解散!

<撮影例>

JPEGで出力したファイルをリサイズしたもの。撮って出しとしては良好ですが、空の色調は手を入れたいところです。

②上記同様、JPEGで出力したファイルをリサイズしたもの。何これ・・?

③上記②と同時にRAW出力したファイルを富士の純正ソフトで加工したもの。

④上記③を更に、ニコンのソフトで加工したもの。富士のソフトでは思い通りの絵になるまで追い込み切れないのが困りごとです。

JPEG撮って出し、リサイズのみ。スマホでもよくある色味の崩れ方ですね。空が燻んだ色で再現されてしまうケースが本当に多いです。

⑥結局、現像という行為は必要ですよね・・。以下に記載するパラメータについて変更を行い、TIFFで切り出したファイルをニコンのNX Studioでリサイズ・JPEG変換しています。

Dレンジ優先:OFF
ダイナミックレンジ:DR200
フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト
増感/減感:+1/3EV
シャドウトーン:-2
カラー:+1