ニコンZ6の吐き出した失敗画像を3手でサルベージする話

前の記事でうだうだと、42年間連れ添ったニコンを棄てた顛末を書きました。
一方で、家族写真をはじめ、過去に撮影した写真を棄てる理由はありません。この意味において今後もニコンとのつきあいは続くんだろうなとは思います。

 

さて。
私はデジタルカメラだけでニコンとは17年間付き合いましたが、ニコンの吐き出す絵は「予想の遥か斜め上を行くダメ画像」であることが本当に多かったです。
このことからも写真が上手な方と言うのは「撮影も、撮影の後処理も上手な人」なんだろうなと思います。メーカーサンプルの画像に騙されて、美辞麗句に煽られて(笑)、それでニコンデジタルカメラを買った方も多いことでしょう。私のようにね。

本当に罪深いと思いますよ。メーカーサイドがそのサンプル画像を生成するに至ったすべてのプロセスを見せてくれる訳が無いですもん。満開の桜を撮影しに行って、理想と現実のギャップに直面して「何これ・・」と思った人が多いんじゃないですか?

確かに写真は手品ではありませんね。従い、撮影者が画像ファイルの作成プロセスを明かす必要はありません。最終成果物である画像ファイルが洗練されたものであれば良いというのは"一面の真理"です。

ですがそれでも言いたいことは「シャッターを押したらこんな素晴らしい絵が撮れます」とメーカーサイドが喧伝するのは幻想だしミスリードであって、一種の有利誤認、つまりグレーゾーンすれすれの(犯罪)行為じゃないのかということなのです。

デジタルカメラを買った方があっけなく挫折してカメラを売り飛ばす最大の理由。それは結局、現像処理の敷居の高さにあるのではないかと思うんです。
ニコンは間違っても「ソフトウェアのこのボタンを一発押せばいいですよ」的な機能を実装することはしません(やれば出来るかどうかは別として)。話は些か脱線しますが、ニコンのカメラが売れなくなった理由はこのあたりにあると私は確信しています。

Zマウントで最高の光学性能を希求するのは一種の正義ですが、ニコンZシリーズが実際に吐き出す画像は「モノクロまがいのダメ画像」でしかないとなったら「ダメだこりゃ」と考えてしまうのは当然でしょ?撮影という行為が全てではなくそこから先の調製が必要なんだよ、という事の周知を放棄してしまっているのは誤りなんです。最新のデジタルカメラを買えば誰にでも綺麗に写真が撮れるというのは幻想で、撮影の後処理は個人の責任において実行する必要があります。しかもその結果をメーカーが担保することは決してありません。

現状では下手をするとスマホの吐き出す画像のほうがよっぽど綺麗だったりしますし、しかもアプリを買ってくれば簡単に盛れます。ニコンなりデジタルカメラを製造する会社なりがデジタルカメラをもっと売りたいのであれば、結局は後処理を軽く、簡単な方法「も」提供するしかないと思います。おそらく誰もやらないでしょうが。

 

さて。ここからが本題です。
「NX Studio」を使ってRAW現像する際には
・効果が高い項目のパラメータ設定から行う。
・現像の手数を減らす(設定項目は少なければ少ないほど良い)。
・必要なら後で他の項目を見直ししてブラッシュアップする。

ことをお勧めします。

70点主義とでも言うのかな。先のニコンZ6が吐き出したオリジナル画像は「何これ」というレベルでしたが、それでも「何とかサルベージできないか」「いちばん手っ取り早い方法を探れないか」と思いながら調製はしました。

みなさんも失敗画像だと諦めずに、サルベージの方法を探ってみてください。

 

①枚目
ニコンZ6が生成したRAWファイルをNX Studioで開いた状態。

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絵に描いたような失敗作例ですね。jpegならカメラ現地で捨ててるレベル・・。

 

②枚目
<1手目>ホワイトバランスを調整する。
色温度を5960Kから5400Kに修正
現像時において最も調整頻度の高い項目は色温度ですね。
先の記事で言及したとおりヒストグラムを見ると、RGBの各チャネルが見事に重なっていますのでこれを補正します。
確かに当日の現地は薄曇りでした。Z6としては正しい色温度設定のジャッジをしたつもりなのかも知れませんが、色温度の自動設定が全体の色調を壊している原因ですので、ここでは強制的に色温度5400Kに設定し直します。

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RGBの各チャネルは分離していますが、色彩感はまだ出現していません。

 

③枚目
<2手目>全体の調子を整える
■D-ライティングHSを+40に設定
シャドー部が潰れて全体の調子が硬いのでD-ライティングHSを使って暗部を持ち上げます。ハイライト基準で露出を与えると、どうしてもシャドー部にしわ寄せが行ってしまうのですがニコンの場合、シャドー部を持ち上げても粘りますので安心ですね。

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ヒストグラムに大きな変化はありませんが、色彩感は感じられるようになりました。

 

④枚目
<3手目>彩度を調整する
■カラーブースターを+65に設定
「明るさと色の調整」の中にある「色の濃さ(彩度)」や、LCHエディターの「彩度」を使って調整を掛けても良いのですが、カラーブースターを使うのが一番簡単です。
※彩度の調整方法は三種類が実装されている事になりますので、お好みで。

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ここから空の青味だけを除去したい場合はカラーブースターの上げ下げではダメなので、LCHエディターか、カラーコントロールポイントを使うことになります。

 

各パラメータの設定量は実際には一発では決まりませんから、何度か見直しを掛けて追い込んでいく必要はあります。でも・・このくらいの絵、最初から吐き出してくれないものかな。どうしてこれくらいのことが出来ないの?

 

その理由が本当に判らないのです。

 

フォトグラファーの中にはモノクロで写真を作品化する方も沢山いらっしゃいますね。モノクロの方が逆に色彩感を感じたりもします。ですが、モノクロで写真を世に問うに至った理由というのは実際のところ「調製しても色のくすみがどうしても除去できなかった」と言った類の理由がほとんどだと思うんですよね。