細客がセパレートアンプに手を出した話③

この日の試聴の結果として、スピーカーはそれなりのサイズ感のものに回帰しようと思いました。我が家ではトールボーイ系のスピーカーをまともに鳴らせる気が全くしなくなったのです。

私の脳内にはNS-1000Mが刷り込まれていて、結局はあの形式と言うか、300mmクラスのウーハーに視覚的なものも含めた魅力を感じているのかも知れませんね。
ちなみに、敷居のあまりに高すぎるラックスマン&フォーカルのブースは横目で見ながらスルーしました。残るブースはJBLです。

いちばん奥の目立つところに4367が鎮座しています。デカっ!高っ!定価211万!むーん。
中の人と少しお話しさせて頂きましたが、お勧めはHDI-3600 GROとの事でした。少し頭を冷やそうという訳で、この日は帰宅しました。

後述しますが、オーディオ店の方が自分の意見を表明することは稀で、今から思うと珍しいです。私は店員さんが自分の意見を表明しないのは一種の「自己防衛」だと思っています。

この国にもクレーマーと呼ばれる手合いは相当数存在しますのでね。中には「お前があの時こう言ったじゃないか」と、言った言わないの水掛け論に持ち込まれた挙句、開封後の返品を要求される事もあるのでしょう。それを避ける為には「あくまでも客が自分の意思で選んだ」という手順を踏ませる必要があるのだろうなと想像します。

それにしても。何故にハーマンの中の人は4367を推してこなかったのでしょうね。理由は良く分かりません。加えてその方は「スタジオモニターは聴き疲れします」とのご高説を展開される始末で…自社製品をディスる社員…本当に大丈夫なのでしょうか。

エベレストだのK2だの、世の中には上の上がある訳です。オーディオは毎日の生活を豊かにするということを実証して更なる高みに誘導するのが販売店さんの仕事じゃないんですかね。
標高128mの七国山に登って登山気分を味わうのもいいですが、オーディオ機器の買い替えに際しては「横滑りは絶対に金の無駄」ですので、せめて斜め上の提案はして欲しかったです。

もっと平たく言うと、私は定価40万のスピーカーを使っているという現況をお伝えしている訳で、定価48万の機器を推奨されてもなあと思いました。同等品を買い替えするくらいなら、今のスピーカーを我慢して使えばいいじゃんねと誰だって思うでしょう。

いつもお世話になっている日本最強小売店の名誉の為に言うと、ヨドバシはポイントの還元で客の次の需要を喚起するというビジネスモデルですね。依って、ハイエンドオーディオのような高額商品はあまり数が出ないのかも知れませんし、お店としても推奨し辛いのかなとは思います。
100万のポイント1割付与なら、私は最初から90万のポイント無しを取ります。10万円は流石に大金だと思いますし、キャッシュをわざわざポイントで寝かせる理由は無いですよね。

なお、カメラ関連の新製品についてヨドバシの値付けが業界標準になっているのは問答無用で凄いと思います。専門店はそこから1割引した値段を初値にしますからね。プライスリーダーシップとはこの事ですね。
ですが、オーディオ機器に関しては探せば安い店は結構ありますし、JBLブースの方もその辺りを意識していらっしゃったのかも知れません。

ちなみに「販売員さんのベタ推し」は、時に絶版寸前の機器を捌きたいという思惑があったりしますので、それなりに注意は必要です。

いや、ひょっとすると…
私は世界のオーディオ事情は寡黙にして知りません。知りませんがJBLのお膝元アメリカでもピュア・オーディオは絶滅危惧種なのでしょうか?3600のカテゴリーはあくまでも「ホームエンターテインメントスピーカー」ですし、アメリカではスタジオモニターはあまり売れていない、なんて話も漏れ伝わってきます。本国に右へ倣えでハーマンの日本法人もこのカテゴリーを販売強化しないと自分の首が危ないとか…

ま、それは無いか。
いずれにしても私はテレビの脇に置くスピーカーを探してはいない訳です。折角機器を推奨して頂いたにも関わらず、ご期待に添えず申し訳ございません。

私はこうして秋ヨド4階のオーディオコーナーを一通り回りましたが、大型小売店のブースを回っている限り、例えばハーマンインターナショナルの方が「タンノイが良いですよ」とコメントする事は絶対に無いですよね。
という訳で、ここから先は専門店に河岸を変えるしかないと思いました。
ヨドバシカメラさんには写真機材をはじめ、書籍、事務用品、プリンター用消耗品、音楽ソフト、記録用メディア、食品、その他諸々、毎年しこたま金を落としていますので、何卒ご容赦の程。

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さて。専門店で試聴をすると言うことは、少なくとも当該機器を含め、何らかの購入を伴うものでなければいけないと私は思っています。全員が全員、利酒しかしなかったら酒屋は潰れてしまうのと同じですね。
と言う訳で、日を改めてスピーカーの「購入」を前提として秋葉原の専門店に突撃しました。

ところがですね。
私の思惑とは違って、専門店さんでのスピーカーの選定は雲を掴むような話でした。

ヨドバシアキバさんのように、まずは大部屋に行って、次にメーカー別ブース行くという方法が取れれば良いのですが、秋葉原の専門店さんは機器の価格帯で設置階を分けています。
依って、フロアが変わればSACDプレーヤーやアンプを含めた試聴機器のパッケージングが変わってしまうのです。スピーカーに当てがうアンプはと言えば、1階はプリメインですが上のフロアはセパレート。比較にならないのです。

あるスピーカーを手持ちのCDで試聴させて頂いた時に「こんなに音が緩いのか」と感じた事がありました。やんごとなき方々の為のデモ音源はクラシックと相場が決まっていますね。ディストーション掛けまくりのヘヴィメタルが大音響で炸裂するなど、お店側は最初から想定もしていないでしょう。
私は機器本来の実力はそんなものではないだろうとは思いました。ですが、ベタ置きしてある試聴用のコントロールアンプを変えてくれとは言えませんよね。

要するに、専門店の試聴用機器は「804を使っているけれどグレードアップしたいから802を試聴させて欲しい」というように、ターゲットが明確に決まっている方の為にメーカーから貸与されているのだと思います。
言い換えると「専門店は雲を掴むような曖昧なニーズを具現化する為に行くところではない」のでしょうね。専門店で出来ることは「試聴機器をWEBで公開している店舗に行って、その機器をピンポイントで試聴することだけ」と考えた方が精神衛生上良いと思います。

私のようにB&W、JBL、KEFあたりの量販価格帯で機器の入れ替えを考えていた人間にはヨドバシアキバで機器を比較して購入するのが手っ取り早かったですね。
804D4や4367のように200万円クラスまではデモ機が置いてありますし設置台数そのものも多い。メーカー間の比較もしやすく便利です。
但し、各ブースの方に試聴をお願いしたら、そこで買わない訳にはいかなくなります。
人間なんだから仁義ってものはある訳です。ところが、実際の販売価格は専門店の方がかなり安い事も多いので充分下調べをしてから望むことをお勧めします。

尤も、これが貴方のような太客になると話が変わる訳ですね。量販店では取り扱いしていないソナスや何たらアコースティック、果ては1億円オーバーのマジコM9あたりを考えているあなたは、専門店に直行して指名試聴からの指名買いしかないです。はい。

細客は辛いっす。
太客になりたかったねえ…

それにつけても。太客さんを相手にした商売はどこも至れり尽くせりなのでしょうねえ。
外国製ハイエンドは高い方から売れるという話ですし、伊勢丹三越だの高島屋だのの金持ち相手の外商部みたいなもので、オーディオ店も「富裕層を掴んだら絶対離すな」みたいな感じなのだろうと想像します。
機器の自宅貸し出しという、腰を抜かしそうなサービスを提供するブランドとお店があるのもその証左で、貸出機を自宅試聴出来る方は人生勝ったも同然ですね。ある意味で成功者の特権と言えるでしょう。

例えば某C-3850を使っている方の所には…
「もしもし!いつもお世話になります。早速ですがC-3900が入庫致しました。お客様の為に1台確保してあるのですが、まずはご自宅で試聴など如何でしょうかあああっ(はぁと)」などといった擽りの電話が入ったことでしょう。

太客ウラヤマス。鴨葱ともいいますが←

で、結局どうしたかと言うと。
・3回出直して最後はエイヤで買いました。
・試聴機ありませんでした。
・男は黙ってブルーバッフル。
・JBL4349
・定価1,188,000円。

どうしてこうなった…

(続きます)