細客がセパレートアンプに手を出した話②

冒頭注: 今回入れ替えした機器に関し、里子に出した製品名は書きません。オーディオは「製品の優劣ではなく、ほんの細部が好みか否かという問題でしかない」というのがその理由です。手放した機器も充分現役で行けますし大切に使っている方も沢山いらっしゃると思います。
本稿はあくまでも馬鹿者の与太話ですので為念。

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Covid-19 以降、私はとにかく自宅で過ごすことが増えました。既往症持ちの年寄りは自宅リビングで大人しくするに限ります。
ソニーの史上最高益更新も「巣篭もり需要」に支えられての事のようですが、私個人も本やCDを通販することが増えました。
表記製品を購入したお店で話を聞いても「お陰様で売上には影響がありませんでした」との事で、ハイエンドオーディオも巣篭もり需要の恩恵に預かった業界ということになるのでしょう。

ちなみに私は、定価50万クラスのAB級プリメインアンプと、定価40万クラスの3ウェイ4ユニットスピーカーを使っていました。所謂トールボーイですね。

さて。
今年1月に、敬愛して止まないJeff Beck氏の訃報が飛び込んできまして、私は強い衝撃を受けました。高校3年の時に、金もないのに広島から倉敷までコンサートを見に行った事を昨日の出来事のように思い出します。アンコールは「Blue wind」だったなあ。しみじみ。

そこで私は久しぶりにロックギターの金字塔である「Wired」を聴こうとしたのですが…

1曲目の「Led Boots」のイントロでいきなり「ハア?」と思った訳です。ナラダ・マイケル・ウォルデンの超技巧変態ドラムが「ブリキの太鼓」にしか聞こえないではありませんか。

これは一体、どうした事か…

とにかく低域がスカスカで音の張りが無いのです。大元の音源がそんなものだと割り切れば、それまでの話なんですけれど。

拙宅はマンションという名の「犬小屋」です。リスニングルームの設置など夢のまた夢。リビングルームの長辺をスピーカーに背負わせても短辺を背負わせても、バスレフダクトのスポンジを入れポン出しポンしても有意差がなく何の改善も出来ません。

リアバスレフのスピーカーは、本当に設置が難しいですね。これは困ったぞ…

私はオーディオで一番重要なのは、結局はソースの盤質だと思います。レコーディングエンジニアの腕もあるでしょうが、全てのソースを好きな音で鳴らすなど不可能だと解っています。
それでは、自分の大好きな楽曲の盤質が悪かったり、音圧が異常に低い場合は諦めるしかないのでしょうか。機器の適切な選定やアクセサリーの差し替えで、一定のサルベージを図ることは出来ないのでしょうか。

まあ、ここが沼の入り口なのでしょうね…

私は財力の範囲で出来るだけやってみようと思いました。もうそんなに生きない訳ですし、人生って奴は楽しむ為にある訳です。故障や経年劣化以外でオーディオ機器の入れ替えを目論んだのは、実はこれが初めてです。

今から5年前の事。長年連れ添ったスピーカーであるNS-1000Mの入れ替えをしたのですが、その時に住宅事情を優先した選択をしたのは失敗だったという事になりますね。これが所謂「授業料」という奴なのでしょう。
それでも、サイズ感の割には良いところも沢山ありました。スコーカーで音決めをしているような感じがあり、中高域の再現性が良かったのです。松岡直也さんのようなピアノを前面に出す楽曲にはアタック感がありましたし、平原綾香さんや岡村孝子さんのような女性ヴォーカルは、オケよりヴォーカルが前に出る感じでこれも良かったです。

つまり、量販価格帯のスピーカーには設計意図に起因する僅かな得手不得手があって、購入するための試聴をするのなら、いちばん好きな楽曲でやらなきゃ駄目だという事ですね。
手持ちの盤質のいいCDを選び、オーディオショップに持ち込んで試聴をしても、きちんと鳴るのが当たり前。ほとんど意味は無いです。
そうではなくて、試聴に際しては「最も好きな楽曲を好きな音で鳴らす選択をする」「機器の粗を暴く」くらいの気持ちが必要なのだと思います。

そこで今回は
①低音の絶対量確保
②楽曲の各パートの分離
を目標に、機器を入替する事にしました。

なお、入れ替えに際しては「先にスピーカーを入れ替えして、それでも駄目なら上流で音決めしているアンプを入れ替えよう」と考えました。全く根拠はないのですが、私は音に対する支配力、影響力の大きさは、まずスピーカーで、次がアンプのプリ部だと思っています。

さて。取るものも取り敢えず行動開始。

まずは問題の「Wired」を持ってヨドバシアキバに行き、4階の大部屋に展示してあるスピーカーを片っ端から鳴らしてみました。あそこは「スピーカーをポン置きしてある展示場」とも言えますが、とにかく機器の絶対数が多いです。物理的なサイズ感と音の傾向を掴むのには秋ヨドが便利ですね。SACDとアンプも現有機器のメーカーと合わせることが出来ました。

結論としては、トールボーイ系のスピーカーは今回の狙いとは合わなかったです。やっぱりと言うか案の定と言うか、低音が前に飛んできません。加えて何となく「人為的に整えたような音」だなあと私は思ったのです。

もちろん、聴く人が聴けばちゃんとした評価を下せるんだろうなとは思います。ですが、今回は上記の視点で機器を選定しようと思いましたので、私の狙いとはたまたま合致しなかったという事です。それだけです。

あの大部屋の展示機器の中では、唯一702S3は端正な音でいいなと思いました。ですがB&Wは本当に高くなりましたね。700シリーズで定価114万とかマジっすか。私は店頭で腰を抜かしそうになりました…
(注:グロスブラックの希望小売価格。実勢価格は現在70万円台まで下がっています)

その後、念のためB&Wのブースにも行ってみたのですが805D4GBの破格のお値段。なにこれ。スタンド抜きで定価135万とか。うわー!
800シリーズの仕上げはぶっちぎりで美しいですし、見ているだけでも所有欲を満たしてくれそうです。ただ、筐体が物理的に小さいので低音の絶対量確保は難しそうなのと、今以上に設置に気を使わないといけない可能性が高いと思い、今回は見送りました。

ブースにはラスボス804D4も常設展示してありました。でも現行804のグロスブラックに至っては、なななな何と定価231万円!!無理ですね、無理。絶対無理。宮大工の作る家具か…
で、スペックを調べたら165mmウーハー2発なんですね。良かったです。もう少し大きければ食指が動い…無理です。買えないです。もちろん憧れの対象ではありますが(汗)。

現状では広く世界を見渡しても4〜5ユニットのトールボーイ・フロア型スピーカーが主流です。B&Wと同じイギリスのKEFもそうですね。だけど、自分には何となく違うんだろうなという事でこれも見送りました。
ただ、デバイス屋のソニーがメカ屋のニコンを圧倒したように、いずれはハイテク満載のKEFがゲームチェンジしてB&Wを圧倒する日が来るんだろうなという気はします。青山に新社屋も完成しましたし、これから怒涛の進撃が始まるんだろうなと。

ちなみになんですが。
パテック・フィリップだの、オーデマ・ピゲだの、B&Wの800シリーズだのをお買い求めになる方は、決済はどうされているんでしょうか?
与信限度額青天井のダイナーズだのアメックスだのでポンと1回払いとか?(滝汗)

お店に現金持ってっても嫌がりますよねえ…
札勘しないといけませんよねえ…

要するに人間には釣り合いってものがあって、私には決済出来ない804Dは買えないって話です。買おうと思えば買えるということと、当たり前にさらっと買えるということは、違うと思います。

(続きます)