1億画素信者うんざり 〜ラージフォーマットに手を出した話2

α7RVを予約開始日に押さえました。恐らく発売日の11月25日には受取できると思うのですが、最初に言ってしまうと最終成果物としての絵はα7RIVと然程変わらないんだろうなと思っています。

オートフォーカスとホワイトバランス、更には手振れ防止機構が強化されているらしいのですが、10fpsで動きモノを追う限り中抜けは出ます。いくらオートフォーカスを強化しようともα1に取って変わることは出来ないでしょうからこれまで同様にソニーR系はポートレート静物が主戦場ということになると思います。

じゃあどうしてそんなものを買うんだという話ですが、分子/分母、つまりヒット率が上がるのなら喜んで買うという事です。
今回ソニーはR系の画素数を据え置いて機能を強化する方向に振ってきましたが、私は三脚は滅多に使わず、フィールドカメラとして使用することを前提としています。つまり私にとっては正常進化であって好ましい出来事でしたからほとんど悩むこともなく購入を決めました。

ちなみに50万円をぽんと出す訳ではありません。あくまでも下取差額交換ですので「追金30万円ならまあいいか」くらいの気持ちであったことは正直に告白しておきます。日本という落ち目の国でアホノミクスの尻拭いをさせられる事に対しては異議申し立てのひとつもしたくなりますし、追金が20万円で済んだら買い替え需要でバカ売れだっただろうなとは思います。ソニーの値付けがちょっと微妙な事は、率直に認めます。

一方で。光をきちんと廻せるスタジオで三脚を立てて撮影をする方にとっては「何それ」ってなもんだったでしょうね。それは用途に起因する評価軸の違いですから一切否定しません。また、美術品のデジタルアーカイブを生業とする方にとっては解像こそ正義、画素数はあればあるだけウェルカムでしょうから、今回の「マイナーチェンジ」は期待外れだったことと思います。

APS-Cで4000万画素のイメージセンサーが作れるのならフルサイズ8000万画素も作れない事はない筈ですからソニーは3年後の7RVIでは他社との差別化の観点から再度画素数を増やす方向に振ると思います。解像命軍団の皆さんは3年間毎日ぽちりぽちり貯金をすれば明るい未来は必ず開けることでしょう。暫くお待ちを。

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さて、ここからが本題です。
ラージフォーマットのイメージセンサーの大きさはフルサイズの1.7倍ある事は前述のとおりです。もし私が現在所有しているα7RIVの画素ピッチでラージフォーマットのイメージセンサーを作ったらどうなるか。6100×1.7=10370 
つまり一億画素ということになります。一億画素と言えば富士のGFX100Sですね。

いらないです、はい。

一方のGFX50SIIはラージフォーマットで5140万画素ですが、画素数を上述の係数1.7で割り戻すとピクセルサイズはフルサイズ3024万画素機相当ということになります。ソニーの無印α7IVは3300万画素ですから一画素あたりのピクセルサイズはそれなりに確保されており、解像感と先鋭感の両立が出来そうな気がしました。

俺はこっちだと思いましたね。

仮にGFX100SとGFX50SIIが同じ値段であったとしても、私はGFX50SIIを選んだと思います。繰り返しますが画素数はα1と同等。ピクセルサイズは30MP機と同等とか、涎ものじゃないですか貴方。とは言え、一点突破型を選ぶもよし、バランス型を選ぶもよしですのでお好みでどうぞ。本稿はいつものように私個人の所感ですので念のため。

ラージフォーマット機を一台お迎えするに至る過程で参考にさせて頂いたのはGFX100Sの作例です。「ISO6400でこの解像感、どうです!」といった類のメンションを付けていらっしゃる方がおふた方いらっしゃいまして、作例自体はとても参考になりました。

一方でお使いのレンズはF4通しのズームでしたからちょっと待ってくれと言うか…マジックアワーは富士の誇るGF80mm F1.7 を持ち出すんじゃないですかと。そもそもラージフォーマットは明るいレンズの絶対数が少ない訳ですから、夕刻から夜間にかけての撮影ではラージフォーマットの持つ本来の強みが全て弱みとして露呈する可能性もあります。それを無理矢理擁護するような論調には本当に辟易しましたし、お前ら、大枚払ってその機材を選んだ自分に酔っているだけだろうと皮肉のひとつも飛ばしたくなります。

作例から得られた知見でいちばん大きかったものは、ラージフォーマットと言えど実用上はISO6400あたりが許容できる限界なんだろうなという事でした。GFX100Sもα7RIVもピクセルサイズは同じですから、例えるなら両者の違いは35mmフルサイズ機と、それをAPS-Cクロップして最初からトリミング前提で使うようなものだと思います。

GFX100Sは画素数が多い分、ノートリミングで撮影した画像をリサイズして切り出せば相対的にノイズ「感」は低減すると思います。それでもやっぱり高感度ノイズが乗った絵はソフト的に後処理をする必要がある訳で、絵の先鋭感が失われるのは仕方ないところだと思います。

この点については富士の純正単焦点でシステムを組んだら軽自動車が買えると言われていますから仕方ない面もありますね。その意味で手持ちのシステムを全部処分してラージフォーマット機に移行した方には心から同情します。その上で言いますが、私なら夕刻から夜間の撮影は最初から35mmフルサイズ機とF1.4クラスの単焦点レンズを持ち出します。

具体的には35F14GM/50F12GM/135F18GMです。レンズで3EV稼いだらISO6400はISO800で済む訳ですから、機材は意図を持って使い分ければいいと思います。下手をするとiPhoneの吐き出す絵がラージフォーマットやらフルサイズやらを圧倒するかも知れませんよね。ですがそれはそれでいいじゃないですか。

前項でニコンをぶん投げてソニーに機材を入れ替えるまでの顛末を書きました。一言で書くとニコンの色再現性があまりに酷かったという事ですね。

手持ち機材を一式ぶん投げて他社に機材を入れ替えしてみると、この世に完璧な機材なんてものは存在しないことがよく解りました。現時点で手持ち機材を一台だけ持ち出すならα1でしょうが、それで全てが足りる訳でもないですし、ソニーにしてみたらしてみたで「こんなことも出来ねえのかよ」なんて事も沢山ありました。

そんな訳で。広い世の中には撮影意図に応じてダブルマウント、トリプルマウントを使い分ける方は平気でいるだろうと思います。これまで私にとってニコンを使うということは一種の信仰のようなものでしたが、今はソニーeだけでシステムを組まなくてもいいやと思っています。

昼間用と夜間用、動きモノ用と止まりモノ用というように用途を意識してシステムを組むというのは充分ありではないかと思いますし、フォーマットの異なるシステムをちょい足ししてみるというのは如何でしょうか。
そうしたらこれまで見えてこなかった世界が見えてくるかも知れません。メーカーが違えば作画傾向は違うものですし、天動説が地動説に変わることだってあり得るかも知れません。